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ゲンゾスキー、トバスキー 〜輪読講座 「宮沢賢治を読む会」より(2)〜

「四番書記、トバスキーとゲンゾスキーについて大略を述べよ。」
(……)かま猫は一生けん命帳面を読みあげました。
「トバスキー酋長、徳望あり。眼光炯々たるも物を言ふこと少しく遅し、ゲンゾスキー財産家、物を言ふこと少しく遅けれども眼光炯々たり。」
(「猫の事務所」より)

 トバスキーとゲンゾスキーは、「眼光炯々たる」、「物を言ふこと少しく遅し」と(言葉をひっくり返しただけで)その特徴は全く同じソックリさんです。何かおかしいですね。この「猫の事務所」(寓話)は賢治さん独特のユーモア溢れる面白い所が沢山あります。けれども「読む会」では、このお話のテーマ〈いじめ〉が、あまりにも私たち現代人の心の奥深く蝕み、社会全体が深くおかされているために、そこに話は集中していき、猫の名前については話の及ぶ時間がありませんでした。「名前」については、「よだかの星」をあげるまでもなく賢治は実に本質的であるし、また本当に名付け方がゆかいなのですが。
 実はこのトバスキー、ゲンゾスキーは鳥羽源蔵さんからネーミングしたのですね。鳥羽源蔵は盛岡の有名な博物学者で賢治もよく知っていました。だから賢治は「イギリス海岸」で発見し採取したあのバタグルミの化石を、この鳥羽源蔵さんに渡したのです。そうしたらその鳥羽さんから東北帝大の地質学古生物学教室の早坂一郎博士のもとへクルミの化石は研究資料として送られたのです。それでこのくるみの化石がまだ学会に発表されていない珍しいものであることがわかりました。そこで早坂博士はイギリス海岸(北上川)を宮沢賢治の案内で実地踏査し、くるみの化石を採集し、翌年『地学雑誌』に発表したのです。(『宮澤賢治外伝』(佐藤成著でくのぼう出版)には、この早坂博士が『銀河鉄道の夜』のプリオシン海岸で大学士として登場していると書いてあります)。

                     熊谷えり子(「宮沢賢治を読む会」講師)


この輪読会で読んだ賢治童話は「猫の事務所」です。
 ※機関誌「リラ自然音楽」2012年3月号より転載しました。


| ポラーノ@管理人 | 23:00 | comments(2) | - | pookmark |
Comment
鳥羽さんから早坂先生へバタグルミの化石がわたって、それからのことが『銀河鉄道の夜』につながったことは、時空のこちらから見ますとなんとも透明できれいな空気の一連の流れのような気がいたします。
Posted by: 風志野 はるか |at: 2012/03/18 11:56 AM
桑原啓善先生も、賢治の実弟である宮沢清六さんから「イギリス海岸でとった、200万年前のクルミです」といって、手渡されたバタグルミの化石を「賢治の分身を受ける思いでそれを受けた」といって大切にされてましたね。
(『宮沢賢治の霊の世界』のエピソード)

人の魂が永遠だとするなら、200万年前、私はどこで何をしていたんだろうと思うと、宇宙空間のようなとても広い不思議な感じがいたします。
Posted by: 草薙 |at: 2012/03/18 1:14 PM








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