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宮沢賢治童話感想文(サムライ平和第13号より転載)その1 「イギリス海岸」

「サムライ平和(ピース)第13号」山波言太郎総合文化財団編集発行 の「特集  宮沢賢治の童話を読む」にはたくさんの感想文が寄せられ、掲載されています。その中から、いくつかの感想文を当ブログに転載させていただくことになりました。

まずは、でくのぼう宮沢賢治の会メンバーの投稿感想文を何回かに分けご紹介致します。


 

 

「イギリス海岸」の感想

 

 私は「イギリス海岸」という話が好きです。北上川と猿ヶ石川の合流点から少し下流の西岸あたりを賢治は「イギリス海岸」と名付けており、それはドーバー海峡の白亜の海岸を連想させるからだそうです。この話では、学校の先生である「私」と生徒の交流が描かれていますが、生徒を温かく見守る「私」の眼差しが感じられ、(あまり学校に馴染めなかった私でも)読んでいると不思議と安心した気持ちになります。また、自然を見る目がとても不思議で川や木や石、様々な太古から生きている自然に対し、自ずと敬意や慈しみを感じます。
 この作品のなかでの「私」と救助係との会話の場面が印象的です。教師の「私」はこの救助係のことを「あの男はやっぱりどこか足りないな」と感じつつも、実際話をしてみると実はずいぶんよく北上川で泳ぐ人たちのことを心配し考えていたことが分かり、「誰でも自分だけは賢く、人のしてゐることは馬鹿げて見えるものですが、その日そのイギリス海岸で、私はつくづくそんな考のいけないことを感じました。」と自身の軽率さを責めます。この箇所を読むとつい自身の日常の生活を振り返ってしまい、今まで、そして現在もどれだけ人や周りのことを馬鹿にして見てきたことだろう…といたたまれなくなってしまいます。
 また「私」は「実は私はその日までもし溺れる生徒ができたら、こっちはとても助けることもできないし、たゞ飛び込んで行って一緒に溺れてやらう、死ぬことの向ふ側まで一緒について行ってやらうと思ってゐただけでした。…(略)そして私は、それが悪いことだとは決して思ひませんでした。」と語ります。
 この場面を読むと、私は忘れることのできない高校時代の出来事を思い出します。ボート部に所属していた私は、とある試合の後、乗っていたボートのバランスが崩れ転覆し溺れかけてしまいました。運悪く身に着けていた救命胴衣もうまく機能せず、近くまで来てくれた救助艇も目の前で故障し、そして川の中は急な流れのため泳いで岸まで辿り着く自信はとてもありませんでした。私は転覆したボートに必死に捕まっていましたが、段々と体も疲れてきて「もうダメかも…」と思っていました。その時、ボート部の監督である先生が一人飛び込んできてくれ、溺れかけた私を助けてくれました。その後その先生は、私が卒業した翌々年に他校の生徒を守る形で他界されました。
 その先生にはどれだけ恩を返しても返しきれません。そして私もその恩師に少しでも近づけるように、人や周りを愛し助けられるような人になりたいと思います。
 「イギリス海岸」のように先生と生徒の温かい交流が描かれている賢治の作品は他にもありますが、どの作品を読んでも、一人一人の教え子に対してどこまでも優しく静かに寄り添う先生の姿を感じます。読んでいるだけでも癒されますが、こんな学校や先生が少しずつ増えていけば、どんなに子どもたちは安心し育っていけるだろうと思います。

         (夏原ゆと)

 

 

| ポラーノ@管理人 | 08:43 | comments(0) | - | pookmark |
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