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宮沢賢治童話感想文(サムライ平和第13号より転載)その2 学者アラムハラドの見た着物

「サムライ平和(ピース)第13号」山波言太郎総合文化財団編集発行 の「特集  宮沢賢治の童話を読む」にはたくさんの感想文が寄せられ、掲載されています。その中から、いくつかの感想文を当ブログに転載させていただくことになりました。

まずは、でくのぼう宮沢賢治の会メンバーの投稿感想文を何回かに分けご紹介致します。


 

 

学者アラムハラドの見た着物

 

 この作品は、残念ながら、途中から原稿が失われています。しかし、残された原稿だけでも大変な力を持っています。実は、賢治の死後に他の原稿の置き場所とは別の押入れから一篇だけ発見された作品だそうです。賢治にとって特別な作品だったのか、発表するに値しないと感じていたのか、「雨ニモマケズ」のように秘匿しておこうとしていたのか、その真意はわかりませんが、私にとっては特別な作品であることに変わりありません。
 アラムハラドは十一人の子どもを教えている学者です。その中でアラムハラドは子どもたちに問いかけます。小鳥が啼かないでいられず魚が泳がないでいられないように、人はどういうことがしないでいられないか、人が何としてもそうしないでいられないことは一体どういうことだろう、と。
 それに対して最初に「人は歩いたり物を言ったりいたします」と答えるタルラ。アラムハラドに「足や舌とも取りかえるほどもっと大切なものがないだろうか」と問い返され、「私は飢饉でみんなが死ぬとき若し私の足が無くなることで飢饉がやむなら足を切っても口惜しくありません」と答え直します。
 さらに、「人が歩くことよりも言うことよりももっとしないでいられないのはいいことです」と答えるブランダ。それを受けてアラムハラドは、「すべて人は善いこと、正しいことをこのむ。善と正義のためならば命を棄てる人も多い」「決してこれを忘れてはいけない。人の正義を愛することは丁度鳥のうたわないでいられないと同じだ」と答えます。
 最後にセララバアドという子は、こう答えるのです。

 

人はほんたうのいゝことが何だかを考へないでゐられないと思ひます。

 

 それを聞いて目を閉じたアラムハラドは、青く美しい心象を見ます。そして、こう教えます。

 

うん。さうだ。人はまことを求める。真理を求める。ほんたうの道を求めるのだ。人が道を求めないでゐられないことはちゃうど鳥の飛ばないでゐられないとおんなじだ。おまへたちはよくおぼえなければいけない。人は善を愛し道を求めないでゐられない。それが人の性質だ。これをおまへたちは堅くおぼえてあとでも決して忘れてはいけない。おまへたちはみなこれから人生という非常なけはしいみちをあるかなければならない。たとへばそれは葱嶺の氷や辛度の流れや流沙の火やでいっぱいなやうなものだ。そのどこを通るときも決して今の二つを忘れてはいけない。それはおまへたちをまもる。それはいつもおまへたちを教へる。決して忘れてはいけない。

 

 このセララバアドやアラムハラドの言葉は、私をずっと支えてくれました。世の中の全てがどうでもよくなって自暴自棄になりかけたときも、自分の中にある何を支えに生きていけばいいかわからなくなったときも。もう、これしかないという思いで、繰り返し繰り返しこの言葉を読みました。最近は、人を裁いてしまいそうになるときにも、この言葉を思い出します。
これからも、この言葉は私を支えてくれます。真実の言葉だからです。

                    (橘香 六花)

 

| ポラーノ@管理人 | 09:21 | comments(0) | - | pookmark |
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