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宮沢賢治童話感想文(サムライ平和第13号より転載)その3 保阪嘉内宛書簡 【番外編】保阪嘉内宛ての手紙

「サムライ平和(ピース)第13号」山波言太郎総合文化財団編集発行 の「特集  宮沢賢治の童話を読む」にはたくさんの感想文が寄せられ、掲載されています。その中から、いくつかの感想文を当ブログに転載させていただくことになりました。

まずは、でくのぼう宮沢賢治の会メンバーの投稿感想文を何回かに分けご紹介致します。


 

 

保阪嘉内宛書簡
【番外編】保阪嘉内宛ての手紙

 保阪嘉内は、宮沢賢治の盛岡高等農林学校時代からの親友です。
 親友嘉内に宛てた手紙は七十三通現存していますが、賢治のあらゆる手紙の中で、若かりし賢治の最も生き生きとした姿が表れているのがこの嘉内に宛てたものだと思います。他の誰にも言えないような心情の吐露、時に励まし合い、時にぶつかりあう、常に真剣勝負の大きな想念の渦のような手紙を見ると、賢治がどれだけ深く嘉内を信頼していたのかが窺えます。同時に、賢治自身にも抑えきれないような矯激な思いを受け止めることができた嘉内という人の懐の大きさを感じずにはおれません。
 私は、賢治が嘉内に宛てた手紙の中の言葉に心から救われた経験があります。
 経緯の詳細は割愛しますが、子どもの頃から、一歩踏み誤ると真っ暗な闇の底に落ちてしまうような感覚があり、学生の頃とうとうその闇に入ってしまいました。それは、自分を含めた世の中の全て、宇宙の一切を否定してしまう、虚無といえるようなものでした。その虚無そのものに苦しみ、また虚無の中にいる自分を受け入れられずに苦しみました。
 保阪嘉内は、大正七年三月に盛岡高等農林学校を除名されます。賢治らと発行していた同人誌「アザリア」に書かれた嘉内の文章が要因となったといわれています。除名処分を受けたことを、嘉内は賢治からの手紙で知ることになるのですが、賢治は嘉内が除名になった原因について、教授らに確認をした上で、嘉内に「実はあなたは幾分虚無的なものと誤解された事が第一の原因な様です」と伝えました。その言葉の直後に、賢治はこう続けたのです。

 

事実あなたはさうらしい。けれども誰とて一度虚无思想に洗礼されなくて本当に一切を肯定する事ができませうか。

 

「ああ、自分の虚無には意味があることなんだ」と、私は、この言葉のおかげで、初めて自分の虚無を受け入れようという気持ちが生まれたのです。いつか一切を肯定できる時が来ることを信じて。
 それから、自分が虚無を超えていくまでには紆余曲折ありますが、虚無の私の手を最初に引っ張ってくれたのが、この言葉だったことには間違いありません。
 他にも、嘉内宛ての手紙の中には印象的な言葉があります。

 

かなしみはちからに、欲(ほ)りはいつくしみに、いかりは智慧にみちびかるべし。

 

 東日本大震災の後、たしか岩手の中学生数名が、各々好きな宮沢賢治の言葉を紹介していたのを電車の中の広告で見ました。その中の一人が、この言葉を紹介していたことに驚き、深い感銘を受けました。この子は、大震災の艱難を経て、この言葉を自分の中で本物にしたのだ、と。それは現代の希望そのものです。そのことを知ってから、この言葉は私にとっても特別な言葉になりました。

 


※ 今回ご紹介した手紙は、ちくま文庫『宮沢賢治全集』第9巻に、書簡49(大正七(1918)年〔三月十四日前後〕保阪嘉内あて封書)、書簡165(大正九(1920)年〔六月〜七月〕保阪嘉内あて封書)として収められています。

 

              (橘香 六花)

 

| ポラーノ@管理人 | 12:07 | comments(0) | - | pookmark |
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