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天から人への問いかけ ―― 中村哲医師のことばから

 中村哲医師は、心から尊敬する人です。

 以前、でく会代表の熊谷さんから聞いたのですが、ご存命だった桑原(山波)啓善先生に中村哲先生の話をしたところ、「ああ、あの神様みたいな人ね」と言われたそうです。

 

 私がまだ学生だった頃、当時はあまり有名ではなかった中村哲先生に友人が「尊敬する人はいますか?」というような質問をした時に、中村先生は「宮沢賢治です」と言いました。中村先生はクリスチャンだと言っていたので、宮沢賢治は仏教(法華経)を信奉してのでは? と少し意外に思ったのを覚えています。

 でも、今なら、その気持ちは良くわかります。

 先生は、「本当の神様」を信じていたのだと思うからです。

 

「みんながめいめいじぶんの神さまがほんとうの神さまだというだろう、けれどもお互いほかの神さまを信ずる人たちがしたことでも涙がこぼれるだろう。」

(宮沢賢治「銀河鉄道の夜」第3次稿より)

 

 中村先生は、大旱魃と戦災からアフガニスタンの人を助けるために、診療所を作り、井戸を掘り、用水路を作って、多くの人々の生活を救いました。そして用水路の中心地に、「モスク」(イスラムの礼拝堂)を建てます。現地の人たちは、用水路(水と食べもの)を得たときよりも、それは、それは、喜んだそうです。「これで、本当に私たちは開放された」と。日本人でクリスチャンの中村先生が、それをやったことを、皆が真似をするのなら、この世の宗教戦争や民族の迫害などは、跡形もなく消し飛ぶと思うのです。

 中村先生は常々「相手の立場になって考える」ことが一番大事だと言っていました。

 

・・・・・・・・・・・

 

 中村先生は、皆の役にたつ医者になりたいという若い医学部の学生の進路相談を受けたときに、「君が何か出来事に遭遇したときに、どうするか、ということが道を作って行く」「わたしなどは、こうなりたくないなあ、と思う方へ行った(笑)」というようなことを答えられていました。この話を聞いて、中村先生が宮沢賢治学会のイーハトーブ賞を受けられた時の授賞式(2004年)に寄せた言葉を思い出したのです。

 

「よくよく考えれば、どこに居ても、思い通りに事が運ぶ人生はありません。予期せぬことが多く、「こんな筈ではなかった」と思うことの方が普通です。賢治の描くゴーシュは、欠点や美点、醜さや気高さを併せ持つ普通の人が、いかに与えられた時間を生き抜くか、示唆に富んでいます。遭遇する全ての状況が――古くさい言い回しをすれば――天から人への問いかけである。それに対する応答の連続が、即ち私たちの人生そのものである。その中で、これだけは人として最低限守るべきものは何か、伝えてくれるような気がします。それゆえ、ゴーシュの姿が自分と重なって仕方ありません。」

「イーハトーヴ賞(宮沢賢治学会主催)受賞に寄せて 中村哲」より抜粋 

(全文)http://www.peshawar-pms.com/kaiho/81nakamura.html

 

 「みんなの本当の幸い」のためには、日常の愛と奉仕しかないことを、私もずっと教わってきましたが、日常で起こる出来事に、どう対処するか。世の中(人)のためにやるか、自分の保身のためにやるか、心をとるか、モノをとるか。その積み重ねでしか、その積み重ねだけが、世界を変えていく、平和を築いていく礎であること。それだけが、その人の人生の価値を決めるということを、中村先生はご自分の人生をもって示して下さったと思うのです。

 

「正しく清くはたらくひとはひとつの大きな芸術を時間のうしろにつくるのです。ごらんなさい。向ふの青いそらのなかを一羽の鵠(こふ)がとんで行きます。鳥はうしろにみなそのあとをもつのです。みんなはそれを見ないでせうが、わたくしはそれを見るのです。おんなじやうにわたくしどもはみなそのあとにひとつの世界をつくって来ます。それがあらゆる人々のいちばん高い芸術です。」

―― 宮沢賢治作 童話「マリヴロンと少女」より

 

 今も中村先生はあちらの世界で、次のもっと大きな活動をされていると信じています。

 

草薙建

 

 

| 草薙建 | 15:54 | comments(0) | - | pookmark |
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